行間をヨモヨモ企画♪
夢の続き
今日も一日、何もしないまま過ぎてしまった。
いつのまにか灯りなしでは文字も書けないほど暗くなっていたことに気付いて、関口は自己嫌悪のあまりため息をついた。
昨日から雪絵は実家に帰っている。タツさん、母親が足をくじいたというので2〜3日家事の手伝いに帰りたいのだけどと申し訳なさそうに言う彼女に「大丈夫。うちのことは心配しないで行っておいで」と胸を張った関口だったが
なんか自分のことのようだ…(汗)ある日のうさこの休日・・
「夏場はタツさん、放っておくと何も食べなくなるじゃあないですか。」それが心配なんですよ、と全然信用がない。
「大丈夫だよ。原稿だって書かなきゃいけないし、起きて食べて書いて、と規則正しい生活をしてみせるさ」と言って雪絵を送り出してやったにも係らず・・。
やはり、というか原稿も全く進まず、外にでるのも億劫で愚図愚図しているうちにもう日は傾いていた。すこしも空腹を覚えなかったが、これで何も食べなければまた雪絵に、ほらごらんなさいとあきれられる。それでも身支度をして外に出るのはやはり億劫だ・・と下らないことを逡巡してると、いきなり玄関の引き戸が勢い良く開く音がした。
「鍵もかけずに物騒だぞ!」
慌てて玄関へ向かうと、もう上がりこんで来ていたかの客人とぶつかりそうになった。
「榎さん・・」
「何をぼうっとしてるっご主人様が訪ねて来てやったんじゃないか」
「別に頼んじゃぁないですよ・・」ついぼそりという関口に
「生意気な猿だ!こうしてやる」と榎木津は腕を関口の首に廻して自分の胸にぎゅうぎゅう押しつけた。
「痛いよ、榎さん・・」謝る謝ると、関口がじたばたする姿が余程こっけいだったのか榎木津は機嫌を直して関口を解放してくれた。
ヘッドロックをするふりをしてスキンシップを図る榎さん・・
それが成功したので機嫌もなおったのだ
「顔が真っ赤だ。ほんとに猿だなっ」と、乱れた関口の髪を手櫛で直してくれる。
「誰のせいですか・・まったく・・」と膨れながらも関口はひそかに榎木津に見惚れていた。近くで見ると榎木津の容貌の美しさがますます際立つ。西洋のビスクドールのような美貌が、話したり笑ったりすると途端に言いようもない程魅力的な表情が生まれ、ますます関口はその顔に魅せられていく。出会った頃からこればかりには慣れることができず、今日も関口は一瞬ぼんやりと榎木津の美貌に見入ってしまった。が、考えようによっては頭をなでられて
うさこの榎さんは関くんの髪を触るのが好きv いる今の状況に我に返り
常に榎さんに見惚れる関口・・・別に顔に惚れたわけじゃないけど・・
「今日はまた?」どうして来たのかと榎木津の手を払いながら問い掛けた。
「昨日京極堂へ行ったら、関のところは雪ちゃんが留守だと言ってたので、夕飯を誘いに来たんだ。どうせ関は一人だと何も食べずに家で愚図愚図じめじめしてるに違いないからなっ」
ちぇ、もっと髪に触れてふれていたかったのに・・
しかも頭をなでるなんて子供っぽいことがしたかったわけじゃないぞ
僕は・・と、榎木津は思ったに違いない
「ひどいなぁ」と言いながらも、全くその通りであったために反論もできない。
「だからご主人様が外に連れ出しにきてやったのだっ感謝しろ。猿」
感謝も何も・・と再び口答えを試みようとしたそのとき、また玄関の格子の音がした。
2人で、え?と顔を見合わせて
慌てて廊下に出ると、玄関のたたきに立っていたのは
ちょっとラブ♪
「京極堂…」
「戸が開けっぱなしだったぞ。物騒じゃないか」
そこには、大きな風呂敷包みを下げた京極堂がいつもの仏頂面で立っていた。
「榎さん、扉くらい閉めてくださいよ」と関口はつい恨みがましく榎木津を振り返ると
「この家に盗られて困るものなどないだろう」と逆に榎木津は開き直る。
「あがってもいいかい?」しびれをきらしたのは京極堂だった。関口はしまったと思いながら、いつにも益して不機嫌そうな彼を招き入れた。
大胆にも京極堂を放置していちゃいちゃモードに入る榎関・・
座敷に上がると京極堂はもっていた風呂敷包みをちゃぶ台にどすんと下ろした。
「なんだい?これは?」
「千鶴子からだ。雪絵さんが留守で君が何も食べていないんじゃないかと心配して作ってくれた。」
いったい自分は雪絵がいないと何一つ出来ないように皆から思われているのか・・と少々落ちこみながらも関口は京極堂の妻の心遣いが嬉しく
「ありがとう」と風呂敷包みをほどきにかかった。
「うちを訪ねてくるんじゃないかと思ってたんだが、なかなか現れないからお重に詰めてくれたんだ。僕もお相伴に預かってくるようにと言うんだが・・」という京極の言葉をまたずして重箱を開けると、千鶴子の心遣い溢れる料理が3段にぎっしり詰まっていた。
「これはうまそうだなっ」横からはしゃぐ声をあげたのは榎木津である。
朝からずーっと関口を待ちつづける夫を見るに見かねて
賢妻 千鶴子は弁当を作ってくれたに違いない・・
「千鶴ちゃんの手料理かっ久しぶりだな」
「榎さんはどうしてここに?」尋ねる京極堂に
「僕もこの猿が、一人でメシも食べずにうつうつとしてるんじゃないかと思って誘いにきたのだ」
「ああ、昨日千鶴子と僕の話しを聞いていたんですね」とあきれるように言う彼の表情にまったく気付かず、榎木津は
関口のことなら耳ダンボで全てを聞いてる榎さん・・
「僕もお相伴にあずかるぞっ」と関口に箸だ皿だと言いつける。
関口は何故か不機嫌そうな京極堂に気を使いながら、その場の雰囲気に耐えられず台所へと立った。そうだ、酒でも出してみよう、少しは空気が和むかも・・と関口にしてはめずらしく気をきかせて用意しはじめた。
千鶴子の手料理は3人で食べても十分過ぎるくらいの量があった。
「食べ残したら明日にまわすようにだろう」という気遣いだったらしいことが京極堂の言葉からわかったが、健啖家の榎木津のおかげで重箱はほとんど空になった。
甘いな。京極堂。
多分賢夫人千鶴子は、榎木津がそばで聞き耳をたてていたのに気づいたので
わざわざ3人分詰めたのだ。
ちょっとやおい好きの面があるらしい??
夜も更けてきて久しぶりに3人でよく飲みよく騒いでいたそのとき、遠雷が鳴った。
「夕立がくるのかな?」と関口がつぶやくと
「雨に降られないうちに、そろそろ失礼しましょうか。榎さん」と京極堂は重箱をかたしにかかった。開け放しの窓から、夕立になりそうな生暖かい風が入ってくる。と、榎木津は何を思ったのか
「僕は泊まっていくぞっ」と持っていたコップをちゃぶ台にかたんっとおろし、再度酒を継ぎ足した。
「ええっ」京極堂もびっくりしたが、何よりびっくりしたのは関口だ。
「泊まって行くって、榎さん・・」
この「ええ?」は関口の口から出たけど
「うそだろ〜?」というつぶやきが京極堂から漏れたに違いない・・
「なんだ、まずいのか?」しれっとして言う榎木津に
「いや、まずいってことはないけど・・」とつい関口は口篭もる。
「今日は新品のスウェードの靴をおろしてきたのだ。途中で雨になんぞ降られたら台無しだからなっ」
と全く意に介した様子がない。折角自分を心配してきてくれたのだから、と関口は諦めて布団を出さなきゃなぁなどと考えていると、京極堂が大きなため息をつきながら立ちあがった。
真夏にスウェードの靴を履くな〜!!
「帰るのかい?」
ため息もでようというものだ・・ちょっと本心でたりする京極堂・・哀れだ・・
「僕まで泊まるわけにはいかないだろう」今日最高の不機嫌な表情で京極堂がそう言うと「当たり前だっ千鶴子さんが待ってるぞ」と調子付いたような声で陽気に榎木津は騒いだ。
玄関まで関口は彼を見送った。
「傘をもっていくかい?」と聞くと
「大丈夫だろう・・」と言いながら京極堂は何か言いた気にしていたが、何だい?と首をかしげる関口に、何でもないというように首を振ると
首傾げ猿・・ちょっとかわいい(か?(汗))30すぎてるけど・・
「それじゃあ、よかったら明日でも店に来たまえ」と彼の食事を心配したのかそう言って帰っていった。
夕立は降らなかった。榎木津と杯を重ねて行くうちに、関口の方が参ってしまって榎木津に布団を敷いてもらう始末だった。むしむしとした嫌な熱さに見舞われたのと、久々に酒が過ぎたせいだろうか…関口はいくつもいくつも夢を見た。
心配したのは関口の夕食じゃなくって、貞操だよ〜!!
関口は戦場にいた。熱帯特有のあのじめじめとした熱さの中、すぐ側にいるであろう敵の気配を感じながら目標地点に到達すべく匍匐前進でそろそろと動いていた。目的地は遠く時折ふと意識を失いそうになる。その意識の間々で日本の友の顔が見え隠れするのだが、またすぐ現実へと意識は引き戻されて、死への恐怖と身体的な苦痛とで叫び出しそうになるのを関口は必死で押さえている…
また、関口は学生時代に戻っていた。
裏庭に同級生達から呼び出しを受けていた。榎木津シンパの彼らは関口を取り囲み、口汚く、どうして榎木津先輩はおまえなんかを相手にするのだ、などと罵り、関口をこづきまわす。どうしてって言われても・・と呟きながら、関口は本当にその通りだと自分でも思って彼らの攻撃に耐えている。ほんとうになぜ榎木津は…
夢からさめた。関口勢い良く半身を起こしていた。体がいやな感じの汗でくっしょりと濡れていた。夢か・・と呟いたが、あまりの生々しさになかなか夢と思いきることが出来ない。
学生時代に呼び出されたのは本当にあった出来事だ。彼らの攻撃が暴力に変わる直前に舎監が通りかかって関口は難を逃れたのだったが、それから暫くは榎木津と目を合わせることもできなかった。
その榎木津が自分の横で寝ている…。
もちろん、この後様子がおかしい関口を『見て』、榎さんはお取り巻きを
こてんぱんにしたのであった。
「どうしてなんだろう…」関口の口から呟きが漏れた。
本当にどうして榎木津はここにいるのか・・これは現実なのだろうか…。先ほどの夢が現実で、今こうしているのが夢なんじゃないか…。
どうしてそんな思考になってしまったのか−夢で見たと思っている戦地が実は現実で、自分は死への恐怖からこんな安穏とした日常を夢見ているだけではないか、というような気もしてきた。同時に、いや、本当の自分はあの皆にこづきまわされていた学生で、榎木津に憧れるあまり榎木津と友人になる夢を見つづけているのではないかというような気持ちにもなってきた。
夢と現実の区別がつかないうっかり関口くん・・
馬鹿な・・と関口は頭をふった。これが現実だ。何より隣で寝ているのは、十数年も付き合いを続けている今の榎木津じゃないか…。
そんなに学生時代は榎木津にあこがれていたのか??
やっぱ「帝王」だからかなぁ・・
それでも傍らの榎木津が少しも動かず眠っている姿は、関口を安心させるには足りなかった。ちゃんと息をしている、現実の榎木津なのだろうか…。関口はつい、寝ている榎木津におおいかぶさるようにして彼の寝顔を見下ろした。
榎木津は規則正しい寝息をたてている。関口の手がふと榎木津の頬に伸びた。実際に触れて現実を確かめたかったのである。
と、そのとき、その手を榎木津が掴んだ。関口はびっくりして体をひいた。
「どうした?」はじめから寝てなどいなかったのか、榎木津の目が開いた。ぱちり、と音がしそうな美しい人形のようなとび色の瞳に見上げられて、関口は慌てた。
寝たふり榎さん・・
でも榎さんて一度寝たら起きなそう・・
「ごめん・・夢を見て…」ぼそぼそと口篭もりうまく言葉にならない。
「夢?」榎木津は関口の腕を掴んだまま、半身を起こした。
「…榎さんは、どうして僕なんかとつきあっているんだい?」何故そんなことを言ってしまったのか、関口は自分でもわからなかった。
「何をいってるんだ。今更…」
「榎さんのような人が、なんでなんの取り柄もないような僕と友達になったのか…もしかしてこれは夢なんじゃないかと…」言いながら関口は自分が何を言ってるのか全くわからなくなってしまった。榎木津は黙ったまま関口が続けて何かを言うのを待っている。
「…ごめん。夢をみただけだ。」急に恥ずかしくなって、関口は榎木津が掴んだままになっていた自分の手を戻そうとした。そのとき
「関が好きだからだ」
いきなり強い力で関口は榎木津の方に引き寄せられた。と同時に唇を榎木津のそれでふさがれていた。
接吻…?
始め何がおこったのか、関口には理解出来なかった。榎木津の唇は温かく柔らかく…その感触に関口はしばし酔った。が、今接吻している相手が榎木津ということに漸く意識が結びつき、少し抗うように関口は榎木津の腕の中で動いた。榎木津が気付いてようやく唇を離した。
「夢…?」関口は思わず呟いていた。
「夢の方が関はいいのか…?」榎木津が関口を見下ろしながらそう少しかすれた声で問い掛ける。
「夢だ…」関口は何も考えることが出来なかった。こんなことはおこるはずがない…榎木津が自分を抱きしめ接吻するなど…そしてそれが少しも嫌悪感を呼び起こさないことなど…。榎木津の目が少し翳ったように見えた。
「夢の方がいいのか…」その目を見つめ続けることが出来ず、関口は自分から目を閉じた。榎木津がふたたび口付けてきた。それに応える自分を関口は不思議な思いで感じていた。榎木津の手が、関口の浴衣を割って直に関口の肌に触れる。それも関口の嫌悪感を呼び起こしはしなかった。全てが夢の中の出来事のように感じていた。榎木津の優しい手で関口の体のそこここを愛撫する。時折背中に悪寒にも似た感触が這い登る。自分が感じているということに関口が気付く頃に、榎木津の手が関口自身に伸びた。下履きを難なく下ろすと直に関口に触れてくる。流石に関口は身を捩ってそれから逃れようとしたが、榎木津の指は執拗に関口にまとわりつき…そのあまりの巧みさに関口は我を忘れて、一気に快楽へと身を任せていた。榎木津の手の中で果てたあと、頭の中で何かが弾けたような感触と共に、関口は意識を失っていた。
翌朝。関口が起きると、横に敷かれた布団は空になっていた。
榎木津はもう起きたのか…。ぼんやりした頭で関口はそんなことを思ったが、急に昨日の夜の出来事が甦ってきて、思わずがばっと身を起こした。
…夢か?
夢にしてはあまりにも生々しい夕べの榎木津の唇の感触…なにより、その手でいかされたあの彼の美しいしなやかな指の感触が関口の脳裏に甦る。
関口は慌てて起きだし、榎木津を探した。
何よりシーツがカピカピになってるじゃないか・・・(←下品)
榎木津はもういなかった。
「夢…?」誰にともなく、関口はそう呟いた。
その日も一日、関口はぼうっとして過ごしてしまった。夕べのことがどうしても頭から離れない。あれは現実だ。とは思う。それでもどうしてそんなことになったのか…。
榎木津は何故悲しそうな顔をしたのか。今朝何も言わずに帰ってしまったのか。
頭の中はそのことでいっぱいだった。そんなとき電話が鳴った。榎木津か?と慌てて関口は受話器をとった。
「タツさん?」雪絵だった。嬉しいはずなのに、どうしてか関口の肩から力が抜けた。
母親もだいぶん良くなったので、明日の夜には帰ると言う。大丈夫だよ、ゆっくりしておいで、と言ったが
「全然大丈夫そうな声じゃないじゃあないですか」と雪絵は受話器の向こうで笑って、明日は夕食には間に合わないかもしれないけれど、ちゃんと帰りますから、と電話を切った。
明日には雪絵が帰ってくる−関口は何となくほっとした。と同時に、訳のわからない焦燥感にかられて、思わず彼は立ちあがっていた。
京極堂では店の主人が相変わらずの仏頂面で店番をしていた。関口の姿を見止めると暫くその表情を見ていたが「まあ上がり給え」といつになくすんなりと座敷に通した。
「どうしたんだい?」いつものごとく出がらしのお茶を入れてくれながら京極堂は関口に問い掛けた。
「え?」
「夢から覚めないような顔をしてるじゃないか」
とたんに関口は赤面した。夕べの痴態が頭に浮かんだからだ。
自分は何を一体京極堂に聞きにきたというのだろう。昨日榎木津と同衾した夢をみたのが現実であるか?…そんなことが聞けるわけもない。関口はしばらく黙っていたが沈黙に耐えかねて
「夢っていうのは、願望を見るんだと思うかい?」
と京極堂へ問い掛けた。
「夢?」京極堂はその唐突な問いかけにすこし虚を突かれたような顔をしたが、すぐいつもの表情に戻って
「それは君の方が専門なんじゃないかね。夢といえばフロイト先生だろう?」
と、君も飲めよ、というように茶をすすりながら関口を見た。
「いや…だから…」口篭もる関口に
「いいかい、関口君。夢というのはだね…」
と京極堂はいつものごとく弁舌を振るい出した。が、関口の頭には少しもその内容が入ってこない。実際口に出してみると、昨日のあれが夢だったとすると、自分はずっと榎木津とそういうことをしたいという『願望』を持っていたというのだろうか、いやそんなことはないと思いながらも、あのとき少しも嫌でなかったことは事実である。何よりあれは現実なのか、それとも自分の頭の中の妄想なのか−そして、あの悲しげな榎木津の表情−
ほんとはここで、京極に一席ぶらせたかったが、いかんせん、
うさこに知識がなさすぎた・・超ごまかし・・ごめんなさい(汗)
「関口君?」いきなり強い口調で名を呼ばれて、関口ははっと我に返った。
「人に喋らせるだけ喋らせておいて、心ここにあらずっていうのはどういうことだい?」
妄想猿・・・気分良く京極がしゃべってるのに失礼な・・
「…聞いてるよ」
絶対に嘘だと見ぬかれることを予測して、弱々しく関口は答えた。案の定、京極堂は聞こえよがしにため息をつくと
「一体何を考えているんだい?」と関口をまっすぐに見詰める。
ショックを受けながらも嫌味を忘れない京極堂は、かなり好きです
「…なんでもないよ。夢か現実か、何だかさっぱりわからなくなってしまっただけだ」
自棄になって、関口は乱暴にそう言い捨てた。こんなことを悩んでいる自分がたまらなく嫌だった。
京極堂はしばらくそんな関口を見ていたが、再び大きくため息をつくと「そんなのは確かめればいいだろう」
といって、傍らの本を手に取った。
「確かめる?」
すごいなあ。京極堂は「見え」ないのに、関口のことならなんでもわかるのね・・
「夢か現実か、当人に確かめればいいじゃあないか」京極堂はあからさまに不機嫌になっていた。
彼に何がわかったのか−関口は戸惑った。が、それを確かめる余裕は彼になかった。そうだ。そうすればいいのだ。
「用がないなら帰ってくれないか?きみのぼんやりに付き合ってるほど僕だって暇じゃあないんだよ」京極堂が持っていた本に目を落としながらそう言った。
「うん…ごめん。ありがとう」
それを機に関口は立ちあがった。
座敷を出しなに降りかえると、京極堂はこちらを少しも見ずに本を読んでいた。
関口が出て行ったあと、京極堂は本をぱたりと閉じた。もう昨日のうちに読み終わってしまった本だ。京極堂は深くため息をついた。
切ない〜(かわいそー)どこまでもポーズを崩さない京極堂・・
そこがまた、哀れだ・・
掌中の珠を失ってしまったような、そんな気分だった。
熱に浮かされたような気分で、関口はそこに立っていた。
榎木津ビルヂング−電車で神田に向かう途中、ずっと確かめることだけを考えて来たのであったが、いざ榎木津のいるであろう場所までたどりついてみると、何と言って切り出していいのか、どうして自分はここまで来てしまったのか、関口はどうしようもなくただただビルを見上げていた。とそのとき
関係ないけど、うさこは榎木津の事務所は神田神保町にあると勝手に思っています。
だって会社の近所だから・・
「関?」後ろから声をかけられて関口は飛びあがりそうになった。
「榎さん・・」びっくりした。外出先から戻ったらしい榎木津がそこには立っていた。
「こんな時間にどうしたんだ?」榎木津も関口の突然の来訪にびっくりしたらしい。
「こんな時間?」気付けば夜の9時をまわっていた。口篭もる関口に榎木津は「まあ、あがれ」と関口の背中を柔らかく押して自分のビルへと招き入れた。
和寅はいないようだった。部屋の中はがらんとしている。灯りをつけようと榎木津が手を伸ばしたときに関口は思いきって
和寅はエッチの邪魔になる・・と、こんなに簡単に「いない」で
片付けちゃってよかったかなあ
「榎さん。」と呼びかけた。
「なんだ?」榎木津が振り返る。外の街灯の明かりだけが照らす薄暗い室内で、2人は暫く何も言わず向かい合っていた。
「どうした?」榎木津が先に口を開いた。
「昨夜の…」なんと言えばいいのか、関口は迷った。が、意を決して
「僕は夢を見たのかい?」と榎木津を見つめた。
榎木津は何も言わなかった。沈黙に耐えきれずに関口は続けた。
「あれは僕のみた夢だったのかい?それとも本当にあったことなのかい?」
「夢の方がいいと、関は言ったじゃないか」
榎木津の表情ははっきりとわからなかった。が、その声は悲しみがにじんでいるように関口には聞こえた。
「…僕が?」
「夢にしておきたかったんじゃないのか」
榎木津が関口の方へ1歩近づいた。関口は動けなかった。じっと榎木津を見詰めていた。
「ずっと前から」榎木津はもう1歩近づいた。
「ずっと前から、関が好きだった」
「…どうして」僕なんだ?と関口は口にしたかったが、言葉は出なかった。
「どうしてなんて、僕にもわからない。でも初めてあったときから、ずっと関のことが好きだった。」榎木津はもう関口の目の前まで近づいていた。関口はおずおずとその腕に手を伸ばした。
「君は猿に似ているね」・・
ホントに榎さんどうして?猿に似てたから?(うそです)
榎木津の腕に触れる。今度は榎木津の動きが止まった。関口は自分の腕に、榎木津の体温を感じた。夏の夜だというのに、その温かさは少しも不快ではなかった。
「榎さん…」
関口は自分の手に力を込めた。榎木津の腕がびくりと動いた。
「夢じゃ、ないんだね」
関口は榎木津を見上げた。目が慣れて、薄暗い部屋の中でも関口には榎木津の端正な顔がはっきりと見えた。
その顔は − 微笑んでいた。
関口が今まで見たこともないような、優しい微笑だった。
関口は昨夜の、榎木津の翳った瞳を思い出した。自分が夢だと言ったときに榎木津は本当に悲しげな顔をしていたのだ − 改めて関口は榎木津の美しい顔を見上げた。
「僕は、確かめたかった」その美しい瞳に魅入られながら、関口の口から言葉が漏れた。
「確かめたくって来てしまったんだ。だって明日になったら雪絵が…」
雪絵が帰ってきてしまう、と言いかけて関口は自分が言っていることの意味を考えて赤面した。雪絵が帰ってきたらなんだというのだろう。まるで自分はここになにかをしにきたようではないか。
「じゃあ、今日は関はうちに帰らなくてもいいんだな」
まさにそのとーり!何かをしにきたのだ〜!
榎木津の顔が嬉しそうに輝いた。そんな表情のひとつひとつにたまらなく関口は引かれていく自分を感じる。
純愛だけど不倫・・そして、榎木津宅には和寅も・・
恋する2人には障害が多いのだ・・
みなさんどうなさってるのでしょう・・
「もう、離さない。」榎木津の腕が動いて、関口をすっぽりと包み込んだ。
「榎さん…」関口は一瞬迷ったが、そのまま榎木津の胸に体を預けた。それを感じて、榎木津は関口を抱きしめる手に力を込めた。
「夢じゃなくて…よかった」
言葉に出来たかはわからない。が思いは伝わったのか、榎木津は益々力強く関口を抱きしめたのだった。
数日後。京極堂に榎木津が訪ねてきた。
「なんです?今日は?」相変わらずの仏頂面で京極堂は榎木津を迎え入れた。
「礼を言いに来ただけだ」榎木津はいつにもまして、晴れやかな顔で京極堂を見返した。
「礼?」京極堂は怪訝そうな顔で榎木津を見たが、何を察したのか
恋する榎さんは、きっと関口の記憶を「見た」のね・・
「僕は何もやっちゃいない」とうつむいた。
「関の背中を押してくれたじゃないか」榎木津がわざわざこれを言いに来た意味が京極堂にはわかっていた。彼は宣言しに来たのだ。僕のものに金輪際手を出すなと。
わかっているから、ますます苦虫を噛み潰したような顔で京極堂は答えた。
「それほど、関口君に対する僕の影響力は大きいということでしょう」
「ふん。それがわかっているから、わざわざ足をはこんでるんじゃあないか」
めっちゃ負け惜しみ京極堂、に対する余裕の榎さん・・
…すまん
ふてくされたように言いながらも榎木津は上機嫌そのものである。京極堂はまずます不機嫌な顔をした。
「やっぱり」
「なんだ?」榎木津は笑い出さんばかりに京極に問い掛けた。
「なんでもありませんよ。用が済んだら帰ったらどうです?」
京極堂は手もとの本に目を落とした。
榎木津はそれでもまだ何か明るく騒いでいる。そんな榎木津を苦々しく見つめて京極堂は心の中でつぶやいていた。
やっぱりあの夜、帰るべきではなかったと。
それでも彼はこんな日がくることを予測しないではなかった。
何もかもが夢であってほしかったのは自分だ。
これから自分が「夢」を見つづけるのだろうか。いつかは彼が自分のもとへと帰ってくるという「夢」を…
馬鹿馬鹿しい、とひとりごちながら、これから先も自分がそんな甘美な夢を捨てきれずにいるだろうということが、京極堂には痛いほどにわかっていた。
適うことのない切ない夢を抱いて、今日も眠るのだ、と−。
京極堂も夢を見るのかしら…
あれ?「人形も夢をみるのかしら」ってなんのCMだっけ?
なんか一人突っ込み一人ボケ・・・
(ちょっと馬鹿みたい・・(泣))
宜しかったら突っ込みにご協力下さいませ♪
終わり
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